第三章 情報屋とマフィア

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 1. 「んふふふふ」  隣を歩くソネットが、またにやけ顔になった。迷彩柄のコートに白い肩掛け鞄という格好で、ピクニックにでも行くかように軽やかに跳ねている。 「ったく。いいか。勘違いするなよ。アマンダを探すためだ。それ以上の目的はない」 「んふふふ。ようやく私に協力してくれる気になったんですね」 「人の話聞けって……」  俺は溜め息をついて頭をぼりぼりと掻いた。ソネットが上機嫌なのは、俺達が今こいつの目的地でもある地下七層を目指しているからだ。  最深層の中央制御室に赴き、テーマパークを再稼働するのがゴーストの目的だが、勿論俺は協力してやる気などない。ただ、アマンダが残したメモが運命の扉を指しているならば、獲物はその辺りに潜んでいる可能性があるのだ。  アマンダを探し出して、元の身体に戻る。それが俺の最優先事項である限り、その場所に向かわない訳にいかない。しかも、どうやって入ったかわからないが、もしアマンダが運命の扉の奥にいるのなら、今その扉を開けられるのはゴーストの技術だけだろう。  つまり、結局ソネットを運命の扉まで連れて行く必要があるのだ。  ――……ま、いいか。取りあえず扉を開けさせる。あとは首筋に手刀を打ち込んで眠らせよう。  そしてアマンダに魂交換を解除させ、めでたく元の身体に戻ってソネットを捕まえる。  ニコニコと微笑む元俺を横目に、そんなプランを練り上げる。  ソネットは嬉しさのあまり、扉を開いて魂交換が解除されたら自分に何が起こるのかすっかり失念しているようだ。つくづくこの天才ハッカーが馬鹿で良かったと思う。
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