彼方のきみへ

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「でも、タクミの紐は輝きが強いわ。それに空に昇っているじゃない」 「ハルカは臨死状態にあるんだと思う。それで記憶が失われて、この中有界を彷徨っていたんだよ。 だけど現世の身体が弱っているから、その魂の紐が切れ掛かっているんだ」 「タクミもそうなの?」  そう訊くと、またタクミが言いづらそうに眼を瞬いた。 「僕はちょっと違うんだ……きみを、ハルカを救いに来たんだよ」 「わたしを……!?」 「その魂の紐を辿っていけば、きっとハルカの身体が見つかるはずだ」  タクミが自信ありげに頷いた。  そのタクミを信じて、わたしは魂の紐を手繰りながらこの中有界を、自分の身体を求めて歩いた。 「ねえタクミ、わたしってどうして死に掛けているのかな?」  隣に並んで黙々と紐を見詰めながら歩くタクミに問い掛けた。 「……ハルカはどう思うの?」 「タクミの紐って空に昇っているじゃない? それってきっと天国に繋がっているんだよ。 それに比べてわたしのは地面に刺さっているから、きっと地獄に行くような死に方をしているかもね」 「そ、そんなことないよ」 「ううん、なんとなく分かるの……わたしって不器用な生き方しかできないから、もしかしたら自殺とかしてたりして」 「なんで自分を貶めることを言うの?」  タクミが頑なな表情で声を尖らせた。 「この世界って何処にも誰にも繋がっていないから、わたしみたいな誰とも繋がれない人間が来る場所なんだと思って──」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加