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「そんなことないッ!!」
タクミの激しい叱責で、わたしは覚醒するように心が揺さぶられた。
「もう一度よく眼を凝らしてごらん」
その優しい瞳で見詰められ、わたしは心を澄ますようにタクミを見た。
すると、タクミの胸から青い紐が伸びて、わたしの胸と繋がっているのが眼に映った。
「これは……?」
「ハルカは僕と繋がっているんだよ」
「タクミと?」
「僕はきみの生まれ変わりなんだ」
タクミがそっと言った。
「わたしの生まれ変わり……?」
わたしは意味が分からず、タクミの言葉を繰り返した。
「退行催眠って知ってる? 催眠術を掛けて、どんどん過去の記憶を遡っていくと、遂には生まれ変わる前のことをしゃべり出すってヤツ」
「……テレビで観たことがある」
「僕は自分の生まれ変わる前が知りたくて、それで退行催眠を掛けて過去に遡ったのさ。
すると、この中有界で独りぼっちのハルカを見つけたんだよ」
「タクミは未来から来たのね」
「ああ、そうだよ。僕が存在しているのは、きみと繋がっているからなんだ。
だから誰とも繋がっていないとか、そんな悲しいことを言わないで」
タクミにそう言われて、わたしは自分が如何に卑屈だったかを思い知った。
人は一人では生きていけない。そんな大事なことに死に掛けてから気づくなんて──
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