彼方のきみへ

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「つくづく、わたしって不器用」 「それは僕もそう思うよ。生まれ変わっても、そこは変わらないね」  タクミが微笑んだので、釣られてわたしも笑みがこぼれる。  わたしは胸のネームプレートを外して、そっとタクミの掌に握らせた。 「こんな情けない前世のわたしだけれど、きみに逢えた証拠にコレを持って行って」 「でも……僕はなにもあげられない」 「ううん、大事なものを貰ったわ」  その言葉を聞いたタクミが、年相応にはにかんだ笑みを浮かべた。  魂の紐を手繰る中有界の旅も、とうとう終着点が見えてきた。  東西へ続く高架線──その下の道路に静止した人だかりが見え、そこにわたしの魂の紐が続いていた。 「なにかの事故かな?」  わたしは問い掛けたが、タクミの視線が別の方へ向いていた。 「狩人ッ!?」  路の果てに佇む黒衣の狩人が、口の無い相貌で眼を細める。 「ハルカ、僕が囮になるから、早く身体に戻るんだ!」  タクミが鉄パイプを手渡しながら、わたしに向かって強く叫んだ。 「でも、タクミは!?」  タクミがオデコをくっつけながら、「さよなら」と小さく口ずさんだ。  そして、狩人目掛けて走りだす。 「タクミ──ッ!!」  わたしは手を伸ばしながら叫ぶが、引力のように強い力で引っ張られた。  タクミが狩人に捕まる寸前で、するりと逃れて光の柱に昇っていくのが見えた。  そこで視界が暗転した──。
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