彼方のきみへ

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「はい。遠野 拓己(とおの たくみ)と申します」  精悍な顔で強く答えた。  自分の胸を探ると、そこにあったはずのネームプレートが消えている。 「……繋がっているよ」 「あっ……すみません、怖かったですか? 自分は不器用なので上手く笑えなくて」 「それ、聞きましたよ」  そっと囁いてクスリと笑った。 「それでは失礼します」  遠野が敬礼して別れの挨拶をしたが、 「また逢えますから」  わたしは確信を持って答えた。  見上げた空は何処までも青く澄んでいた。  その向こうへ届くように、心のなかで口ずさむ。  彼方の未来に生きるきみへ──わたしは人と繋がりを持って、この世界で生きています。 ──彼方のきみへ 終。
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