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子犬はシッポを振りながら、ゆっくりと彼女に近付き、手からクッキーをとって、少し後ずさりし、少し考えたようにしながら、クッキーを食べた。
それを見た彼女は満足した様に、
「おいしいでしょう。じゃぁね、、、ワンちゃん、バイバイ。」と言い、俺達はまた歩き始めた。
「彩、あの犬、きっと付いて来るよ。」
「優は、犬の心も読めるの?」と嬉しそうに二ッコリと笑う。
既に日は落ちてしまっていたが、大きな月が赤々と俺達が歩く道を照らし、あの子犬も、まだ俺達の後を付いて来ていた。
すると、突然、彩が、
「どうして、カメラ持ってこなかったの?」と少し不満そうな顔で聞く。
「別に、映像に固執してるわけじゃないし。それに、彩との時間をもっと感じていたいから、100%の彩を見ていたいんだ。」
それを聞いた彼女は、少し嬉しそうな顔をしたが、まだ少し不満そうな顔で、
「どうしよう、ログブック?私、てっきりあなたが映像を撮ると思ってたから、全部記録する気でいたんだけど。」
「ごめんな、ちゃんと話しておけばよかったね。」
彼女は少し考えてから、二ッコリ笑い、
「じゃあ、日記でも付け始めようかな、そうする。その日その日の事を、私が日記として記録に残すよ。もうすぐよ、ひぃ婆っちゃんの家。びっくりするだろうな、いきなり顔出したら。でも、どう思う?今晩中に小屋につけるかしら?」
「別に明日の朝でもいいんじゃないの?もう、ここまで来ちゃってるし、邪魔する人なんかいないと思うよ。」
「あの子犬、まだ付いてきてるわね、、、」
「彩が手懐けたんだから、彩の犬ね。ちゃんと面倒みてよ、奥さん。」
すると、彼女は照れたように、
「“奥さん”って、なんか気恥ずかしい。」と言うので、
「“あなた”も気恥ずかしいんですけど、奥さん、、、仕返し。」と言い返て笑った。
「犬の名前、どうしよう?」
「もし明日まだいたら、考えよう。」
「そうね」
遠くの方に、暖かそうな小さな赤い光が見えてきた。
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