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八時を少し過ぎた頃、俺と彩は、その家の扉の前に立っていた。
彼女はその扉をノックして、
「ひぃ婆っちゃん、私、彩です。」と言ったが返事が無いので、俺は扉を引いてみた。
鍵が掛かっていない。
彼女は扉を開いて、大きな声で、
「ひぃ婆っちゃん、彩だっちゃ!おらんとね?」と言う。
「彩ちゃんか?何しようとね、こんな遅くに、早く入ってきんさい。」と言う曾祖母の声が家の中から聞こえる。
彼女が俺の手を引くので、
「こんばんは、優です。ご無沙汰してます。」と言い、土間に入り扉を後手で閉める。
彼女の曾祖母は、居間の戸を開き、
「優君ね、そぅね、そげね、、、早よ、中に入りんさい。久しぶりやね。」と言って、俺と彩に手招きをする。
まず彩が先にハイキングブーツを脱いで居間に上がり、俺も彼女に続く。
「お邪魔します。」と居間に上り、囲炉裏の横に座る。
「どうも、ご無沙汰です。ご連絡もせずに、突然押し掛けて来て申し訳ありません。」
「優君は、何時もながら硬かねぇ。もっと気楽にしなっさい。そんで、どげんしたとね?駆け落ちでもしたとね?」と曾祖母はお茶を淹れながら本気か、冗談かわからない声で聞く。
すると、彩は真面目な顔で、
「実はね、ひぃ婆っちゃん、まだ、ちゃんと公表されてないっちゃけど、もうすぐ“この世の終わり”が来るらしいと。じゃけん、しばらくの間、優と二人で山の小屋で生活したいと思っとると、、、よかね?」
「今晩か、明日の朝、世界同時に何か重大な事を公表するらしいんです。何を公表するのか、何が起こるのかは、想像できません。大混乱に成るかもしれないので、、、ですから、正確に言うと、彩と二人で街から逃げて来たんです。」
「そげんね、、、それで、親御さんとは、ちゃんと話し、したとね?」
「はい、昨日、二人でお互いの両親に合って、”結婚します”と言いました。」
「ひっ婆っちゃん、、、どげんなるかわからと。でも、私、彼の子供、生みたいっちゃ!安全な所で育てたと。」と真面目な顔。
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