ログブック

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しばらくすると、彩が小さな声で 「私も入るわね。」と言って、入ってきた。 「ひぃ婆っちゃんが、“旦那さまの身体を流してきんさい。”って言うもんだから、、、」と恥ずかしそうに言う。 俺は、湯船から上がり、 「そんなに恥ずかしがるなよ、俺が洗うから。」と言い、木の椅子に座った彩の小さな肩に流し湯を掛け、泡立てたタオルで優しく身体を洗い、お湯を掛けてその泡を流した。 まだ恥ずかしそうにしている彼女の、華奢でとても白い肌は、桜色と言うより、もう少し赤の濃い紅梅色に染めている。 「とても綺麗だよ、彩。」 すると、女は頬をその色に染めて、 「ありがとう、」とはにかみながら八重歯を少し見せる。 そして、 「あなたの背中も、流させて、、、」と言って、タオルに泡を立て俺の背中を洗い始めた。 「こうやって見ると、優の背中って、とても大きいのね。この三年間、あなたの背中ばかり見てきたけど、ぜんぜん気付かなかったな。」と言って、冷たくなった肌を俺に合わせる。 俺に背中を向けて、寄り添うようにして風呂につかっていた彼女は、 「一緒におっ風呂入るの、これが初めてじゃないとに、、、なんか恥ずかしぃちゃ、、、どことなく新婚旅行みたいやと思わん?」と、めったに俺に使わない方言でつぶやいた。 「そうだよ、知らなかったの?」と言って、彼女の身体に両腕を軽く廻す。 「俺も、幸せだよ。君がいてくれて。」と強く抱きしめた。 しばらくの間、暖かい湯の中でそうしていた俺達は、二人で風呂から上がり、身体を拭きあって、用意されていた浴衣に着替えた。 「髪が短いと、乾かすのが楽ね。でも、やっぱり優は、長い方が良かった?」 「短い髪も、すごく似合ってる。」 俺は濃紺の浴衣に黒の帯。彩は真白な浴衣、とゆうより薄い生地の着物に白の帯と細くて赤い腰帯を締めて、囲炉裏のある部屋に戻った。
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