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部屋の上座にあたる部分には、座布団がニ枚並べてあり、曾祖母は、
「二人とも、何遠慮しようとね?さっさと座らんね。」と言い、俺達をそこに座らせる。
「彩は化粧気がないけんね、、、」と言い、たもとから紅を取り出して、くすり指に付け、彩の頬と口に少し注して、
「大した物は無いけんど、祝言始めまっしょ。」と言い、
「高砂はよう歌わんけんね、よかね?」と笑顔で言った。
彩が、照れながら
「ひぃ婆っちゃん、そこまでせんでも良かとに、、、」と恥ずかしそうに言う。
それでも俺は、
「よろしくお願いします。」と言い、用意されていた、三つの杯の一つを手にした。
曾祖母はそそれに、三回に分けて酒を注ぎ、俺は、三回に分けてその酒を飲み、彩にその杯を手渡した。曾祖母は彩の持つ杯にまた三回に分けて酒を注ぎ、彩はそれを三回に分けて飲み干した。
その作法を三回やって、三三九度の儀式を終えると、曾祖母は、
「婿様、これで彩は彼方様の妻であります。彩、これで優君はお前の旦那様じゃけん。
末永長く、お使えしないかんばい。」と言った。
俺は手をついて頭を下げ、
「よろしくお願いいたします。」と言うと、
彩も手をついて頭を下げ、
「不束者ですが、よろしくお願いいたします。」と言った。
曾祖母は昔ながらのポラロイドカメラを出すと、写真を数枚撮り、
「一枚はお前の母さんに送っとくけん。」と言った。
俺は、お酒を曾祖母に注ぎながら、
「ありがとう御座いました。」と言う。
すると、曾祖母は
「早く、優君と彩の子供の顔が見たかね、、、その顔を見るまでは死ねんけんね。」と言い、
「何が起ころうとも、わたしやぁ、ここで、ずーっと待っとうけん、、、早よう子供作って、連れて来んさい。」と言った。
彩はその時、下を向いて、嬉涙を流していた。
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