第一章 年下の彼

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第一章 年下の彼

牧田芙美子は、朝起きると、見知らぬ天井が視界に入った。 「ここどこなのかなぁ?あぁ、頭ががんがんする。。」 芙美子が、隣を見ると、見知らぬ男がベットに横たわっていた。 いや、知らない男じゃなかった。 上司の高部二郎だった。上司なのだが、彼は歳下だったのだ。 そうだ、夕べ、一緒に飲みに行ったのだった。 ここはぁ、もしかしてラブホテルなのかぁ、夢なら覚めて欲しい。 ああそうだ。 相談があるからと、誘われて。。 「あぁっ、確かにかすかに覚えている。私とした事が。。」 芙美子は、飛び起きて、慌てて服を着た。 「まずいっ、しかも遅刻しそうだっ」 「ううん。。あれ、行っちゃうの?」 二郎は、アクビしながら、呑気に、 照れ笑いをして、こちらを見た。 「あー、あ、あたし行きますので遅刻するからっ」 「そう、僕、今日遅番だから、後でね、芙美子ちゃん」 二郎の話し方は馴れ馴れしかった。 「さ、さ、さよならっ」 芙美子は、とっ散らかっていた。 芙美子は、髪に着けていたシュシュを 床に落としたまま、出ていった。 二郎は、笑みを浮かべてシュシュを拾い そして 芙美子のシュシュにキスをした。 ホテルから会社は、すぐ近くだった。 誰か知ってる人に会わないか、おそるおそる 通りを小走りに歩き、 芙美子は、高層ビルの ガラス張りの扉を通り抜けた。 「おはよう、芙美子」 後ろから、同僚が声を掛けてきた。 その声の主は、三田よしみだった。 「おはよう」 芙美子は、落ち着いて返事をした。 「あらぁ?芙美子ぉ、昨日と同じ服装だけどぉ?」 よしみは、目ざとく突っ込んできた。 「あらっやだぁ、間違ってまた、  同じ服を来てきちゃったのかなぁ、あたし」 芙美子は、苦笑した。 「あははっ、芙美子ったら、そそっかしいんだから」 よしみは笑った。 あー、心臓ばくばくしてるよ。 よしみが全然疑わないのが、ちと、悲しいかな。。 なんていってられないよ。 芙美子は、心の中で、ぶつぶつ言っていた。 牧田芙美子、三七歳。 コールセンターの派遣社員として ベテランの芙美子は、一年前に 新しい部署に、リーダーとして配属になった。 そして、数ヵ月前に、この部署の 新たな主任として来たのが高部二郎だ。
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