1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、おばあちゃん。これ何」
あどけない声と共に差し出されたのは古い写真。
「卒業写真よ」
「おばあちゃんだよね」
指される人物は確かに昔の私。
「懐かしいわ。どこで見つけたの?」
それには答えず孫は質問を変える。子供特有の取り留め無さを演じて。
「卒業ってなあに」
「皆で勉強して色んな事を覚えられたら、社会に出て行く事を卒業と言ったのよ」
自分なりの答えを口にするが、この子は解っている。
話し掛けて来たのも、私が独り寂しそうだったからだろう。
孫達の世代に卒業と言う考えも勉強と言う考えもきっとない。それに近いものは有るかも知れないが。
人類は突如大きく変化した。
新しい世代は、集合的無意識の精神領域に自在に入り込み知識を引き出せた。
故に、私達古い種よりも遥かに速く成熟した考えを持つ。
世界は平和になった。
けれど、取り残された古い種は孤独だと私は空を見上げる。
そこに浮かぶは、宇宙からの使者が乗る数々の船。
最初のコメントを投稿しよう!