種の卒業

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「ねえ、おばあちゃん。これ何」 あどけない声と共に差し出されたのは古い写真。 「卒業写真よ」 「おばあちゃんだよね」 指される人物は確かに昔の私。 「懐かしいわ。どこで見つけたの?」 それには答えず孫は質問を変える。子供特有の取り留め無さを演じて。 「卒業ってなあに」 「皆で勉強して色んな事を覚えられたら、社会に出て行く事を卒業と言ったのよ」 自分なりの答えを口にするが、この子は解っている。 話し掛けて来たのも、私が独り寂しそうだったからだろう。 孫達の世代に卒業と言う考えも勉強と言う考えもきっとない。それに近いものは有るかも知れないが。 人類は突如大きく変化した。 新しい世代は、集合的無意識の精神領域に自在に入り込み知識を引き出せた。 故に、私達古い種よりも遥かに速く成熟した考えを持つ。 世界は平和になった。 けれど、取り残された古い種は孤独だと私は空を見上げる。 そこに浮かぶは、宇宙からの使者が乗る数々の船。
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