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電話口から薄ら聞こえる溜息は、大園の眉頭にみるみると皺を寄せさせる。
歯切れ悪く、口を閉ざしてしまうのも解らないでもない。
部屋にある唯一の出入り口の扉を、一点見つめたまま大園の表情は険しくなっていく。
『承知いたしました。……で、頼みたい件とはなんでしょうか?』
聞こえてくる声は呆れた、と言わんばかりだ。
女性秘書の呆れている顔が嫌でも思い出されてしまう。
大園は、少し言いにくそうに口を開いた。
「……昼食を部屋で取る」
『はい。では、食堂のランチをお持ちいたしましょうか?』
「いや、いい。……ウィダーか何か買ってきてくれないか」
『……社長……はぁー。畏まりました、直ぐお持ちいたします』
女性秘書の声は、電話が切れると同時に聞こえなくなった。
大園が意図して電話を切ったのだ。
電話のやり取りの中、女性の話し方に少し棘が感じていた。
ただイライラしているだけなのか、もしくは女性特有の日でイラついているのか。
何故、女性秘書がイラついているか。その原因を理解している為、大園はさっさと通話を切った。
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