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ふ、と今頃家で昼食を取っているだろう青年を思い出した。
大園たっての申しでで、青年との住み込みに近い同居が始まった。
その彼は相馬幸太郎。
早くに両親を亡くしている事、家が……帰る場所が無い事。
つまり色々と苦労していたらしい。
今現在、大園と生活を共にしているが、仕事漬けで会社を出る頃には時刻は日を跨いでいる。
決められた就業時刻はあれど、役職柄か大園の終業時刻は不規則だった。必然的に帰宅する時間は遅くなってしまう。
そして、ここ最近休んだ記憶が全くない事に気付く。
「……あぁー……くそッ」
考えれば考えるほどイラつきは増して来る。
眉間の皺も表情も険しくなり、元に戻るのか心配になる程だ。
コンコン
「……どうぞ」
社長室の扉がノックされた。
目線を動かし扉へ向ける間も、デスクに飛散する書類を整理していく。
扉が開かれるまでの数秒間に大園はまた溜息を付いた。
「失礼いたします、社長。昼食お持ちしました」
「あぁ、ありがとう。そこに置いといてくれ」
大園は入室して来た女性秘書に見向きもせず、運んで来たであろう昼食をデスクに置くよう指示した。
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