長瀞ライン下り

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なんだかちょっとキザな芸能人みたいだった。 私たちは案内されるままにワゴンタイプの車に乗った。 三列目のシートに空とその弟の陸、二列目に翔と私、助手席にはうちのお母さんが座った。 「空くん、陸くん、おはよう~。」 馴れ馴れしく手をふるお母さんに、 「おはようございます。」 二人は体育会系らしく挨拶を返した。 「海くんは来れなかったの?」お母さんが聞く。 「あ、はい、部活です。」空が答えた。 「そっか、残念だね。」続けて「あ、うちのリナ、空くんと一緒の六年生。学区が違うから隣りの学校なのよね。よろしくね。ほら、リナ、挨拶しなさいよ。」 私は促されてチラッと後ろを振り向いたがすぐに前に向き直った。 空と目が合ったような…気がした。たぶん「気がした」だけだ。 二台の車は互いを気にしながら、首都高から関越道へと走った。 翔は後ろを振り返りっぱなしで空と陸とDSで遊んでいた。 私は車窓から流れる景色に魅入った。 ビル群の間を縫うようにして走る首都高の景色は圧巻だった。 東京ってこんなにビルがいっぱいで、しかもデザインがオシャレ。いったい何のビルで何人の人がそこに居るのだろう。 「…なの?リナちゃん。」 「ほら、リナ、葉山コーチが聞いてるでしょ。返事しなさいよ。」 「あ、え? 何?」私はハッと我に返った。 「うちは女の子が居ないからリナちゃんみたいなコ、新鮮だなぁ。」葉山コーチが笑いながらバックミラー越しに私と目を合わせた。 私は思わず目線をそらせた。 車は関越道の花園インターから一般道へと進み、長瀞(ながとろ)のオートキャンプ場に到着した。 駐車場で車を降りて、初めてもう一台の車の木村コーチの奥さんと子供たちと挨拶をした。 男子たちは早速小石を蹴ったり投げたりしていた。 私も私より二つ年下の美幸(みゆき)ちゃんと仲良くお母さんたちの手伝いをした。
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