葉山家へ

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「明けましておめでとうございます。よく来てくれたわねぇ。さあ、そんなに堅苦しくしないで足を伸ばして。」 優しい口調だったが、先入観からかドラマに出てくる怖い姑役のベテラン女優みたいだった。 空と陸がレモンティーの1.5リットルのペットボトルと缶ビールを数本持って入ってきた。その後から長男の海がコーチに背中を押されて入ってきた。 私は思わず目をそらした。 「あけましておめでとうございます。」お母さんが言うと、 「おめでとございまーす。」 それぞれがぺこりと頭を下げた。 「正月なんだからちゃんと挨拶しろよ。」 コーチが苦笑いして言うと、すかさずお母さんが、 「これ、本当に気持ちだけなんだけど…」と言って、紙袋から《お年賀》というのし紙のついた包みとお年玉袋を三つ差し出した。 「あざーす。」三人はニコニコしてお年玉を受け取る。 「悪いね。そんな気をつかわなくていいのに。じゃあこれはリナちゃんと翔に。」 コーチがポケットからお年玉袋を私たちに差し出した。 「ありがとうございます。」素直に受け取る。 「こちらもすみません。」お母さんが恐縮して頭を下げる。 「俺、もう友達と約束あるから。」 海が言うと、 「乾杯だけして行け。」 コーチの声で、みんなが飲みものを開けてグラスについだ。 大人がビール、子供たちはレモンティーだ。 「さあ、みんなグラス持ったか? じゃあ新年に乾杯~っ。」 コーチのかけ声でみんなが乾杯した。 「乾杯。」 お母さんとコーチがグラスをカチンと合わせて、ビールを一気に飲み干し、目を合わせて笑った。
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