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大人の情事
私は平日は週に4日、学校帰りにそのままバイトに入り、閉店時間の夜9時まで働いた。
土日もバイト仲間と話し合ってシフトを入れていた。
働いて給料をもらうことに達成感を感じていた。
毎日のように「あと何日バイトに入れば貯金が何万円になる」と、通帳を開いていた。
高校では友達も出来て、互いの家に行きあうこともあった。
「リナの家ってお金持ちじゃない?」
当初、家を見てそんなことを言われたりもしたが、玄関を入るとコソコソと自室に通し、家族の誰ともたいした会話を交わさない私の様子に、訳ありの家だとすぐに悟られたと思う。
「リナは自分が幸せだと思う?」
あるときふと尋ねられた。
「…どうかなぁ。不幸ではないと思うけど、幸せだと感じたこともないなぁ。」
「でもリナは幸せなんだよ。自分で気付いてないだけだよ。」
「エミリ、なんでそう思うの?」
「リナには住む家があって、ご飯が食べられる。」
「なにそれ。」
エミリは急に笑いながら
「いや、お腹すいたなぁと思ってさ。何か食べに行かない? サイゼ!」
「いーねー。」
私たちは自転車で近くのサイゼリヤに行った。
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