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ロストバージン
日々が平凡に過ぎていった。
平凡というのは幸せなことなのかもしれない。
私にとっては、早く大人になって自立したい、その思いで日々を送っていた。
学校へ行き、バイトし、どこに居てもなるべく他人には迷惑をかけないように心がけた。
バイト先の大学生となんとなく付き合っているような感じになった。
ヒマなときにはLINEでやりとりした。
隅田川の花火大会には手をつないで歩いた。
電車の席で寄り添ったり、
別れぎわに軽くキスしたり、
もうすぐそのときは来るのだろうと身構えていた。
「ね、今度 リナのカレシ紹介してよ。」
エミリに言われた。
「食べに来たときに会ったじゃん。」
「あのときは単なる客と店員みたいな感じっしょ。そうじゃなくて、ちゃんと話してみたいんだよね。リナのカレシさんと。」
エミリが冷やかすように笑って言う。
「ね、エミリってさ、その、なんていうか、したことある?」
私は思い切って聞いてみた。
「なんで?」
エミリの反応が瞬時にしてシラけた感じだったので、思わず
「なんでもない。ごめん。」
謝ってしまった。
聞いちゃいけないことだったんだ。
咄嗟に感じた。
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