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続 夕暮れの衝撃
相手が誰なのかなんて確認できなかった。
とにかくショックで、その場を走り去った。
だってあれは絶対にお母さんだったもの。
それからどうやって時間をやり過ごしたのか記憶にない。
ただひたすらに自転車をこいで、疲れ果てて家に帰った。
「リナ、お帰り。どこ行ってたの?」
お母さんの笑顔がいやらしく見えた。
私は黙って自分の部屋に向かった。
「翔の次、お風呂入っちゃいなさいよ。もうご飯だから。」
お母さんが作った焼きそばを食べる。
お母さんと翔は今日の試合を振り返った話に盛り上がる。
「すごかったよね。やっぱり空くんは。」
「俺だっていいパス出してたでしょ。」
「うん。翔も上手くなったよ~。お母さん泣きそうだった。」
そら という名前に少しだけ胸がキュンとした。
あの夜のそらの勇姿がよぎった。
焼きそばを食べるお母さんの口、
翔と会話するお母さんの口、
その唇が
さっきどこかの男と重なっていた。
「あ、お姉ちゃん、デザートあるよ~。ハーゲンダッツのアイスクリーム!」
翔が得意気に言った。
私はお母さんの方を見た。いやお母さんの口を見たのだ。
すかさず翔が、
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