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「最低だな」
ベットに倒れこみ、白い天井を見つめ自己嫌悪する。
実の所、僕は彼女と会ったその時。
記憶を取り戻していた。
なんでも無いような顔をしながらも、赤くなって『私、君のことが好きなんだよね』そういう彼女を。
それに嬉しいなと思った自分の気持ちを。
それを忘れようとした自分も。
僕は彼女とあの公園で、他愛もないことを話すあの日常が好きだった。
愛しているといっても過言では無い。
彼女もそうだと思っていた。
だから、とは言えないのかもしれないけれど、非日常を持ち込もうとした彼女に失望した。
男女の関係になれば、友達ではいられなくなる。
それはつまり、この日常が壊れるということ。
そして僕は彼女の告白を、拒絶するでもなく、受け入れる訳でもなく、忘れる事にした。
去り際に見せた、彼女の横顔を思い出す。
「泣いていたな」
彼女は信じていなかった。この局所的で不合理な記憶喪失を。
それでも彼女は、僕のそれに現漠という理由を付けることで、自らの告白を無かった事にしてくれた。
それが彼女の心に、どれだけの傷をつけたのか分からない。今、彼女はどんな顔をして何を思っているのかも。
泣いている?怒っている?無かった事にした僕を恨んでいる?
それとも、彼女も告白した事を早まったと思っていて、無かった事にホッとしていたりするのだろうか。
「そんな訳ないだろ」
都合のいい想像をしたと自嘲する。
どうせなら、ずっと忘れたままでいたかった。そうしたら、こんな自己嫌悪をする事なく、今頃のほほんと過ごせていたのだろう。
彼女の心は知れないが、僕にもわかることがある。
これから先、僕と彼女はいつも通りの時間にあの公園に行き、夢のような日常を送るだろう。
だけど、近いうちにこの日常は自然消滅する。
当然だ、既に僕たちはすれ違った。
「罰。というより因果応報かな」
日常を守るため彼女を傷付け、その結果壊してしまった。
目を閉じ、想いを告げ赤くなる彼女を思い返す。
もし、また彼女が想いを告げてくれたなら。
「いや、違うか」
今度は僕から言おう。彼女が既に、僕の事を嫌っていても言わせてもろう。
そして身勝手な僕は、取敢えずこう言って話始める。
バクが出た、と。
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