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僕が目覚めて半日過ぎた。
だけど思い出す事は何も無かった。
懐かしさとかすかな違和感だけはあったが、2人といると消えてしまう。
「マーティン、何か思い出す事はあったかい?」
お昼が済んで、僕達はテーブルを挟み向かい合った。
「ううん…。なにも…。」
僕は顎に手をあてて考えた。
― クスッ
その様子を見てブラウン博士は小さく笑う。
「なにか可笑しい?」
「ううん…。ただ、仕草や癖は忘れないんだなと思って。」
仕草や癖?
「本当ですわ。やっぱり貴方は貴方なんですのね。」
アリヤも一緒になって、クスクスと笑った。
もしかして、仕草や癖ってこの手のこと?
僕は顎にあてた手を離して眺めた。
「やっぱり先に知識を植え込むより、自発的に思い出す方が自然だね。」
「えぇ、そうですわね。」
―え?
聞こえた言葉に、僕は2人を見た。
2人はそんな僕に穏やかな目を向ける。
「もう少ししたら、海に行こうか。」
穏やかで嬉しそうな、顔だった。
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