第1章

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部屋には懐かしい匂いのするものがたくさんあった。 ベッド、クマのぬいぐるみ、お絵描きセット、望遠鏡。 天体模型、図鑑、辞書。 テーブル、本棚、万年筆。 全て、すべて懐かしい。 「どうかな?」 部屋を眺める僕に、博士はクマのぬいぐるみを拾い問いかける。 「……なつかしい。」 「そう…他は?何か思い出した?」 「…………。」 思い出す… ことはない。 ただ酷く懐かしくて、胸が締め付けられるだけだ。 「……ブラウン…博士、」 「……なんだい?」 ここ、ほんとうに僕の部屋? 「うぅん。何でもない。」 そう言いたかったけど、言葉にはしなかった。
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