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祭の最初の目的は、お面屋探しになり、やっと自然に、と言っても、少しぎこちなさは残っているけれど、それでも会話をすることができるようになった。
探しながら二人はタコ焼きと焼きそばが食べたいねと話して、お面を買ったら買って食べようと決め、お面屋で面を探す。
しかし、縁日にあるお面屋はどれもこれもキャラクターものばかりで、蒼志の持っているような狐面は何処にも売っていなかった。そもそも蔵に会った面はプラスチック製ではないし、その辺で売っている様なものでもないから、同じようなものが見つかるとは端から二人も思っていなかったけれど、兎鞠は納得のいくお面が無くて、縁日にある全てのお面屋を回った。それでも気に入るものは見つからなかった。
「あーあ、残念」
そういう兎鞠の横で、彼女よりも残念そうな顔をしている蒼志。「そうだね」の声が弱々しい。
その姿に堪え切れずに笑い声を漏らした。
「ふふふ。どうしてそうしくんの方が残念そうなのだろう」
「こんなに探して無かったから、僕がお面なんてしてこなければ、無駄なことしなくて済んだのになって。ごめんね」
「変なの。わたし、楽しかったよ? お面探し」
「ほんとう?」
「本当です」
澄ましてそういって、それから微笑んだ。
「さ、焼きそばとたこ焼き食べようよ」
「うん」
上手く気持ちの整理がつかないまま、それでも兎鞠が楽しそうならと、俯いていた顔を上げて、後を追おうとした。
その時、鈴の音がした。
チリィィィン。チリィィィィィ……ン。
喧噪の中だというのに鮮明に聞こえるその音に、蒼志は思わず音がする方に振り向いた。
いつの間にか、太陽は沈み、空は藍色、端の方に、染め残しのように紅がまだ残っていてる。提灯の灯りが意味をなし始め、その光がぼやけたように見え、屋台から漏れる明かりも重なって、人や屋台、空気までもが、何処か現実感を失ったようだ。
チリィィィィィ……ン。
鈴の音がする方向へ進む。
そこには、お面屋があった。
こんなところに、お面屋なんてあったっけ。さっきのお面屋で最後だった気がするけど。
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