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蒼志は不思議に思いながらも、良いお面はないか探した。動物のお面がいいと言っていたのを忘れずに、動物の面を探すと、一つだけ、狸の面を見つけた。雰囲気が自分のつけてる狐の面に似ている。これならきっと、とまりちゃんも気に入ってくれる。嬉しくなってそのお面を手にとった。
「おじさん。これください」
そこで、ふとお面を見て気がついた。値段を見なかったけれど、いくらだろう。値札を探してみたが、何処にも見つからない。面にも、屋台の何処にも。途端に不安になった。もしかしたら、持っているお金じゃ足りないかもしれない。そしたら、買ってあげられない。どうしよう。
「五百円ね」
焦っていた蒼志は、店主のしわがれた声を聞いて、思わず「へ?」と間抜けな声を出してしまう。それは十分買える値段で、どころか他の出店よりも安かった。
数秒呆けてから、慌てて財布を出し五百円玉をわたす。
蒼志は面を手に入れた。
遅れてこみ上げてきた嬉しさに、小さく拳を握って、そこで蒼志は、兎鞠とはぐれてしまっていることに気がつく。
どうしよう、せっかく買ったのに、これじゃあわたせない。
探そうと、顔を上げた時だった。
「そうしくん」
目の前に、兎鞠がいた。
蒼志はほっと胸をなで下ろした。もしも探しに行ってしまっていたら、すれ違っていたかもしれない。せっかく面も手に入ったのに、それでは台無しだ。
「よかった、見つかった」
「あ、ううん。ごめん、探してくれて」
「ただ戻ってきただけだよ。探したって程じゃない」
「ありがとう」
わざわざ探してくれたことが嬉しかった。嬉しさのあまり忘れてしまいそうになったが、蒼志は自分の手にもっているものを思い出す。
「あ、そうだこれ、見つけたんだ。どうかな?」
「たぬき? かわいい。素敵だね」
「気に入ってくれたかな」
「うん。ありがとう。どこで買ったのこれ?」
「そこのお面屋さん、で」
蒼志はそこで違和感を覚えた。
蒼志が指を差した方向にあるのは、確かにお面を置いている。だけど、それは景品としてで、そこにあったのは籤引きの店だった。
確かに、お面屋で買ったと思うんだけど。だが蒼志の記憶はなんだか夢を見ていたようにぼんやりとしていて、絶対にそうだと言いきることができないでいた。一回五百円という文字も、蒼志の混乱を呼んだ。首を傾げて、でも、確かにお金を払ったしと、自分を納得させることにした。
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