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籤で引いて当てたのを、買ったと勘違いしたのかもしれない。疲れが残っているから、少し寝ぼけたんだ。恥ずかしい。言わないでおこう。それに、こんなものが普通のお面屋においてあるわけないよね。
蒼志が持っていたのは、自分が頭に付けているのと同じ、しっかりとした面だった。キャラクター物のプラスチックの安物ではない。こんなものが普通のお面屋にあるわけがない。だから、この籤で当てたんだ。五百円で手に入ったなんて、今日の僕はついてる。そうプラスに考え、納得した。
「どうしたの?」
「な、なんでもないよ。そこのくじ引いたら当たったんだ」
「すごい、ラッキーだね」
「これ、あげる」
「え、悪いよ。お金払うよ」
「いや、その、ほら、偶然当たっただけだし、僕にはこれがあるし、その、もらってくれると、嬉しいんだけど」
ぐっと、面を兎鞠へと突き出す。じっと兎鞠を見つめるその目は、笑ってしまう程真剣だった。
だが兎鞠は笑わない。その目をじっと見つめ返して、しばらくじっと見つめ合う二人。
普段の蒼志ならば、五秒ともたずに、いや二秒ともたずに目を逸らしていたことだろう。そうなったら、おそらく兎鞠は譲らなかった。彼女は真面目で、少し頑固だから。それ故に彼女は凛としているのだ。
そして、真面目が故に、人の気持ちに、しっかりと答えるのだ。
「……わかった。ありがとう」
お面を受け取り見つめて、頭に当ててみて、何処が良いかを吟味する。気に入った場所を見つけて結んだ。
片方は簪が輝き、片方は狸の面がつけられた兎鞠は、子供らしい可愛らしさと、女性的な綺麗さを併せ持っている。
微調整を終えると、兎鞠は笑ってみせた。
「ほら、お揃い」
その笑顔と言葉に、蒼志は顔を真っ赤にして、俯いて「うん」としか言えなかった。
だから、兎鞠の方も顔を赤らめているなんて、知る由もない。
「た、たこ焼き、食べに行こうか」
兎鞠の方を見ずに、たこ焼き屋台を指差した。
「うん、そうだね」
蒼志の方を見ずに、努めて冷静にそう答えて、並んで歩きだす。
色んな屋台を回る二人を、屋台のおやじは冷やかし、通りかかる人は微笑みを浮かべた。
面の位置は、蒼志とは対照になるようにつけられていて、傍から見てとても仲が良さそうに見える。
小さなカップルを見つけた人は、誰もが微笑みを浮かべてしまうのだった。
○
祭の喧噪が遠くに聞こえる。
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