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クカカカ、と笑い声を上げ、それから、どうにも自分の状態がおかしいとでもいうように、動こうとしているようだが、がたがたと揺れるだけ。首を傾げようにもそれも出来ない。
狐面が自身の状況を把握しきれずにいるなか、やっと状況に意識が追いついてきた蒼志は、「お、おお、お」と興奮したチンパンジーのような声を出し始めた。
「おいどうした童。何かに取り憑かれてんのか?」
「お面が、喋った」
「だあれが面だ!」
「ひっ」
「おばけだとか言われるのならまだしも、俺の何処が面だっていうんだ。どう見たって狐だろう」
怒鳴られ怯えながらも首をぶんぶん振って否定の意を示す。
必死な様子に疑問を持ち、「どういうことだ」と狐面は問う。どうしたら信じてもらえるだろうと考えて、蒼志が思いついた方法は、実際に見てもらうことだった。
お面をおっかなびっくりそっと持ちあげて、部屋を出て早足に階段を下りていく。
「おい、なんだ、何すんだ、何処連れてくんだ」
質問に応えることなくどたどたと洗面所に行き、鏡の前にお面を掲げた。
「あ? なんだよ面か? なんだよこんなもん、どうしようって、あん? ……はあ? おいおい、ちょっと待てよ、おいおいおいおい」
鏡に向かって狐面が口を動かしてみたり、瞬きをしてみたり、舌を出してみたりと色々と試している。
ぐいぐいと動くお面を抑えていて、段々と疲れてきてしまい、落っことしそうになった。一回下ろしたいなと蒼志が思っているのを察知したように、動きが止まった。
鏡を覗くと、まるでさっきまで動いていたのは夢か幻だったのかと思ってしまうくらい、口も動かず、目も閉じられていた。
あれ、と思い、お面を自分の方に向けてじっと見つめる。
するといきなり、かっと目を大きく開けた。
「面になってるじゃねえかあ!」
いきなりの大声。その迫力に蒼志は手を離してしまう。お面は落ちて天井を仰ぐ形になる。
「痛え馬鹿野郎!」と文句を言って、そのままぎろりと蒼志を睨みつけた。
「どういうことだこりゃあ! お前がやったのかああんっ?」
「し、知らないよ」
「じゃあなんでお前は俺の前にいるんだ。この俺を何処で手に入れた」
「おじいちゃんが、くれたんだ」
「お前のか」
「うん」
「よし、じゃあ、そいつに会わせろ」
「えっと、今はその」
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