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歯切れの悪い反応に舌打ちをして、お面は苛立ちを隠さずに「なんだよ」と脅す様に言った。
それに促されて、また怒鳴られるのかなと怖かったけれど、言わないともっと怖そうだと、諦める。
「その、今は、いないんだ」
それはもちろん、出かけているからいないという意味で蒼志は言ったのだが、目を逸らし、悲しそうな顔で言った蒼志を見て、狐面は、はっと何かに気がついた風に口を開け、用意していた言葉を全て押しこんで、言葉を探した。
すぐに怒鳴られると思っていた蒼志は、心の準備をして待っていた。それなのに、いくら待っても、声すら上がらない。どうしたんだろうとお面を見ると、今度は狐面の方が目を合わせないようにしていた。
溜息を吐いて、さっきとは打って変わって、冷静で落ちついた雰囲気で話しだした。
「そうか、悪い、その、なんだ、そんな顔するなよ。まさかそんなことだったとは思わなかったんだよ」
「え?」
「じいさんの形見に俺をもらったんだろ? 俺からしてみれば迷惑な話だが、お前は何も分かんないのに、大きな声出して悪かった」
「何を言ってるの?」
「何ってお前、じいさん、死んじまってんだろ?」
「生きてるよ?」
「なにぃ?」
勝手に勘違いして、勝手に混乱し始め、そして、自分が勘違いしたことに気がついて、視線をあらぬ方にもっていく。
「紛らわしい言い方するんじゃねぇよ、ったく」
八つ当たりだ。
しかし、蒼志はそれにバカ正直に謝る。
「ごめん」
「いや、お前、あのなぁ。……まあいい。とりあえず、お互い落ちつこうぜ。さっきの部屋に戻ってよ、情報交換といこう」
「うん」
頷くと、蒼志は狐面を持ちあげて、自分の部屋へと向かった。
驚いたり怖かったり、とにかくよくわからないことが起こってしまって、不安であるし混乱しているが、蒼志の心の奥底には、別の思いもあった。
不安とよく共に湧いてくるそれは、未知への期待だった。
○
「お前はは俺を蔵で見つけたんだな?」
「そうだよ。神社の蔵で、光るお面さんを見つけたんだ」
部屋の壁に狐面を立てかけて、二人は向かい合って座り、話している。面の方を座っているというのかは疑問が残るところだが。
「お前のじいさんは何か知ってるのか?」
「わからないけど、知ってそうだった、かも」
「あんまり期待しねえ方が良いかな」
「お面さん」
「その呼び方止めろ。俺は狐玖羅だ」
「コクラ?」
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