第一幕

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 歯切れの悪い反応に舌打ちをして、お面は苛立ちを隠さずに「なんだよ」と脅す様に言った。  それに促されて、また怒鳴られるのかなと怖かったけれど、言わないともっと怖そうだと、諦める。 「その、今は、いないんだ」  それはもちろん、出かけているからいないという意味で蒼志は言ったのだが、目を逸らし、悲しそうな顔で言った蒼志を見て、狐面は、はっと何かに気がついた風に口を開け、用意していた言葉を全て押しこんで、言葉を探した。  すぐに怒鳴られると思っていた蒼志は、心の準備をして待っていた。それなのに、いくら待っても、声すら上がらない。どうしたんだろうとお面を見ると、今度は狐面の方が目を合わせないようにしていた。  溜息を吐いて、さっきとは打って変わって、冷静で落ちついた雰囲気で話しだした。 「そうか、悪い、その、なんだ、そんな顔するなよ。まさかそんなことだったとは思わなかったんだよ」 「え?」 「じいさんの形見に俺をもらったんだろ? 俺からしてみれば迷惑な話だが、お前は何も分かんないのに、大きな声出して悪かった」 「何を言ってるの?」 「何ってお前、じいさん、死んじまってんだろ?」 「生きてるよ?」 「なにぃ?」  勝手に勘違いして、勝手に混乱し始め、そして、自分が勘違いしたことに気がついて、視線をあらぬ方にもっていく。 「紛らわしい言い方するんじゃねぇよ、ったく」  八つ当たりだ。  しかし、蒼志はそれにバカ正直に謝る。 「ごめん」 「いや、お前、あのなぁ。……まあいい。とりあえず、お互い落ちつこうぜ。さっきの部屋に戻ってよ、情報交換といこう」 「うん」  頷くと、蒼志は狐面を持ちあげて、自分の部屋へと向かった。  驚いたり怖かったり、とにかくよくわからないことが起こってしまって、不安であるし混乱しているが、蒼志の心の奥底には、別の思いもあった。  不安とよく共に湧いてくるそれは、未知への期待だった。 ○ 「お前はは俺を蔵で見つけたんだな?」 「そうだよ。神社の蔵で、光るお面さんを見つけたんだ」  部屋の壁に狐面を立てかけて、二人は向かい合って座り、話している。面の方を座っているというのかは疑問が残るところだが。 「お前のじいさんは何か知ってるのか?」 「わからないけど、知ってそうだった、かも」 「あんまり期待しねえ方が良いかな」 「お面さん」 「その呼び方止めろ。俺は狐玖羅だ」 「コクラ?」
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