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ラップを取って一つ食べる。蒼志は祖母の作るおにぎりが一番好きだ。塩がしっかりと満遍なくかかっていて、具も三つとも違う。今食べているのはタラコだ。蒼志の一番好きな具。
食べながら、狐玖羅の存在を思い出して、皿とコップを持って部屋へと戻った。
部屋に戻ると、狐玖羅は疲れたのか手拭の上に転がっていた。
「おう、何処行ってたんだ」
「じいちゃん探しに。でも今いないみたい」
「まあ焦っても仕方ないだろう。ところで、何もってんだ」
「おにぎり。食べる?」
「いらねぇな。食欲は無ぇし、そもそも食べれる体じゃねえな。クカカ」
狐玖羅は笑ったが、蒼志はどう反応していいのかわからずに、とりあえず笑ってみたけれど、なんか違って、正直に言った。
「どう反応したらいいの?」
「あん? 好きにしろよ。お前の自由じゃねえか」
至極つまらないことを聞かれたと言いたそうな言い方に、面喰ってしまい、何も言えずにおにぎりを食べ始めた。
それを気にすることなく、眉間にしわを寄せて、狐玖羅は困った声を出した。
「あー。しかし、じいさんがいないならどうしようもないな。何か手掛かりとか、調べられることはー、うーん、なさそうだな」
調べるという言葉に引っ掛かりを感じて、蒼志は独り言のように呟いて、何かが釣れるのを待った。
「調べる。調べる、調べる。……あ、そうだ」
「どうした」
「図書館に行けば何か分かるかなって」
「図書館ん?」
「えっと、本がいっぱいあるの。自由に読めるし、貸してくれるんだよ」
「いや、それは知ってる。図書館で何か分かんのか?」
「じっとしてるよりはいいかなって、思ったんだけど」
言葉尻が小さくなって、思ったんだけどというのはほとんど聞こえなかったが、狐玖羅には関係なかった。
何かが気に入ったように、にやりと笑った。
「違いねぇ。暇だしな。行こうじゃないか」
「うん」
同意してくれたことが嬉しくて、蒼志は笑って頷いた。
おにぎりを食べ終えて食器をかたずけて、寝ぐせを直して着替えを済ます。特別なところに行こうとしているわけではない。歩いて一〇分くらいの、何度も利用したことのある図書館に行こうとしているだけだ。だが、蒼志はわくわくしていた。
喋るお面と行動するというのが、非日常的だからだというのは、蒼志にはわからない。
わかるのは、何か面白いことが起こるんじゃないかという、何の根拠のない予感だけだ。
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