第一幕

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「今年もお世話になります」 「おや、蒼志。来たのか」  お辞儀をし終えた蒼志に、そんな声がかかった。蒼志が振り向くと、そこには袴姿の厳格そうな老人がいた。  蒼志は嬉しそうに顔をほころばせて、アイスを食べきった。 「じいちゃん」  重たいリュックも気にせず蒼志は駆け寄った。  急に走ったせいで麦わら帽子が外れたが、あご紐が首にひっかかり落ちることはなかった。短めに揃えられた髪の毛が帽子で少し潰れていた。  祖父、繋護は突進してきた蒼志をどうにか受け止めて、優しい笑顔を浮かべて頭を撫でた。 「来たよ、じいちゃん」 「おうおう、よく来た」 「お手伝いするからね」 「ありがとう。お小遣いをやろう」 「いいよ、好きで来てるんだもん」 「じゃあじいちゃんも、好きで蒼志にお小遣いをやろう」  厳格そうな雰囲気からは想像できない孫バカぶりで、繋護は蒼志に笑いかける。 「さあ、その荷物を置きに行こう」 「うん」  二人は神社の敷地のはずれにある家へと向かった。
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