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「今年もお世話になります」
「おや、蒼志。来たのか」
お辞儀をし終えた蒼志に、そんな声がかかった。蒼志が振り向くと、そこには袴姿の厳格そうな老人がいた。
蒼志は嬉しそうに顔をほころばせて、アイスを食べきった。
「じいちゃん」
重たいリュックも気にせず蒼志は駆け寄った。
急に走ったせいで麦わら帽子が外れたが、あご紐が首にひっかかり落ちることはなかった。短めに揃えられた髪の毛が帽子で少し潰れていた。
祖父、繋護は突進してきた蒼志をどうにか受け止めて、優しい笑顔を浮かべて頭を撫でた。
「来たよ、じいちゃん」
「おうおう、よく来た」
「お手伝いするからね」
「ありがとう。お小遣いをやろう」
「いいよ、好きで来てるんだもん」
「じゃあじいちゃんも、好きで蒼志にお小遣いをやろう」
厳格そうな雰囲気からは想像できない孫バカぶりで、繋護は蒼志に笑いかける。
「さあ、その荷物を置きに行こう」
「うん」
二人は神社の敷地のはずれにある家へと向かった。
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