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「おかしいなあ」
「どうしたんだ、蒼志」
「あのね、このお面、光ってたんだ」
「お面が光ってた?」
「嘘じゃないよ」
「どんなふうに光っていたんだい?」
「なんだかね、ふわあって、ピカピカって感じじゃなくてね、綿みたいだった」
「ほおう、なるほどなあ」
どうしてか、繋護は嬉しそうに微笑んだ。
蒼志の頭を撫で、それから、お面を手にとり、優しい目で見つめた。輪郭をなぞるように触れて、「そうか」と溢した。
どうして嬉しそうなのか不思議で、蒼志はつい首を傾げてしまう。
このお面は、なんなんだろう。行事で使う物でもなさそうだけど。
「ねえじいちゃん、このお面は?」
そう訊くと繋護は、ふっふっふと、幼子をあやす様に笑った。
「これは、じいちゃんの大切なお面さ」
「大切なお面?」
「そう。大事なものなんだ」
「だから、飾らないでここにしまっておいたの?」
「ああ」
「綺麗でかっこいいのに、もったいないね」
「気に入ったか?」
「うん。なんか、良い」
「そうかそうか」
目を細め、何かを思い出す様な、懐かしむ様な色が目に見えた。
「蒼志」
「なあに?」
繋護はしゃがむと、蒼志の頭にお面の紐を回し、少しきつめに結んだ。
「これをやろう」
「え、でも、大切なものだって」
「そう。大切なものだ。だから、蒼志も大切にしてほしい。いいね?」
「でも」
「これはね、お守りでもあるんだ。きっとお前を、助けてくれる。持っておいで」
「……わかった。ありがとう、じいちゃん」
とても嬉しそうに笑って、蒼志はそのお面をつけたまま、掃除を再開した。
気のせいか、なんだかつける前よりはかどってる気がした。
○
掃除は一五時には終わり、後は物を戻すだけとなった。
といっても、物を戻すのは今日ではない。今日出したものの大半が、使われるからだ。
祭が行われるのだ。
毎年この暑い中掃除をするのは、祭で使う物を出すついで。ついでではあるけれど、もう何十年と続いていて、風習と化している。
掃除を終えた蒼志は祖母の切ってくれたスイカをむしゃむしゃと美味しそうに食べる。気分はるんるん。掃除が去年よりも早く、満足のいく仕上がりになった。それに加え、お祖父ちゃんの大切なものをもらえたというのが、さらに嬉しいのだ。それが自分の気に入ったものなのだから、尚更。
「美味しいかい?」
「うん」
祖母の問いかけに満面の笑みを浮かべる。
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