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「必ず戻ってくるが、それがいつになるのかは解らない」
マスターはそう言って、キキさんと仲間たちに、冒険で得た全ての財産を残し、自由に生きるよう命じて旅だった。
もちろん仲間たちは、みんなマスターに着いて行きたがったが、別の世界を渡り歩く能力はマスターしか持ち得ない。旅を何よりも愛するマスターの気持ちを汲んで、心より尊敬する者を見送ることを、彼女たちは涙ながらに決意した。
マスターが行った後。キキさんを除く四人の仲間は、拠点だった館を去った。もちろん、マスターが帰還した暁には再集結しようと誓ったが、全員、何をすることもなく館に篭っているような性格ではなかったのだ。
みんな生まれた時には力弱かった者たちだが、マスターとの冒険を経て大きく成長し、独り立ちするには十分な力量を養っていた。四人は旅費は旅先で稼ぐと言って、当面の路銀だけを手に、各々旅立っていった。
独り、キキさんだけが館に残った。
彼女の性格と、そしてその能力は館の維持管理に向いていたし、いつになるか分からないとはいえ、マスターの帰還を寂れた無人の館で迎えるわけにはいかないと、キキさんは考えていた。それに、旅に出た仲間たちの帰る場所だって必要だ。
そのような理由で。
キキさんは今、一人で館に住み、マスターの帰りをひっそりと待っていた。
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