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誰かいる。
距離はまだ離れているが、鋭い聴覚が声を拾う。
「は・・ぁ・・・ん」
甘い睦言だ。
カァと理沙の頬が赤くなる。覗き見の趣味は無いので、理沙はそろそろと逃げようとすると、知った声が耳に届いた。
「・・・野洲先生っ・・・・・・・」
こくんと理沙は息を呑んだ。少し低めの、ボーイッシュな女の子の声。間違いない、真由の声だ。
理沙は気配を消し、そろそろと奥へ進んだ。別館の裏には倉庫がある。使わなくなった学校用品を一時的に保管する場所だ。まだ十分に使えるものは国際交流機関を経て、寄付される仕組みになっているから、わざわざ別館の裏に倉庫を作ったのだ。
声は倉庫からだった。生い茂る草木のせいで、簡易に作った倉庫は随分と古びて見えた。木が腐りかけている。理沙は指でそろりと木の一部を剥がすと、中を覗き込んだ。
そこには、自分の良く知っている快活で純情な親友はいなかった。男の話題になると、すぐに話をそらして避けていたあの真由が、スカートだけの姿で光孝の上で喘いでいた。真由が慣れた風に、光孝の上でキスをねだっている。
あまりにギャップがありすぎて、正視に堪えられず、理沙はそっとその場を後にした。
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