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 再び教室に戻り、ぼんやりと待つ。ブルブル携帯が鳴って、理沙は携帯を見た。 『ノスに捕まって、課題やり直し! もうちょっとで終わる!』  白々しい嘘だ。 英語の得意な真由が光孝の課題に限って、しょっちゅう居残りさせられてたのは、逢瀬を繰り返していたからだろう。 隠し事をされていた事に、理沙はムカムカした。リストカットまでして自分を追い詰めていたのは、なんだったんだ。  その時を思い返すと、真由の腕に奇妙な斑点が残っていた事を思い出した。あれはもしかしてキスマークだったのだろうか。だとすれば、理沙の家に二人で来ると言う名目で落ち合い、何処かで二人して体を重ねたその足で、自分を見舞ったのだと思うと、余計に苛立ちが増す。 「ごめん。待った?」  声をかけられ、理沙は強張った顔で振り返った。薄暗い放課後の教室で、少し翳った真由の顔は大人びて見えた。 「帰ろ♪」  肩に手をまわされ、理沙は思わず振り解く。突然の激しい拒絶に、真由はきょとんとした顔を見せた。 「どうしたの?」 「・・・今まで何処にいたの?」 「メール見てないの?」 「・・・・・本当の事、言ってよ」  真由は首を傾げた。 演技は堂に入っている。それでも、理沙は真由との付き合いは長く、唇を軽く舐めたのを見て、彼女が嘘をついているのだと、すぐに見抜いた。 「さっき・・・ノスを探しに別館まで行った」  それだけで、真由には十分伝わったようだ。一瞬目を見開いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、眉間に皺を寄せる。  非難するつもりはなかった。けれど、見過ごすわけにはいかない。 光孝は容姿がいいから、女の噂も多い。絶対に捕まりたく男だとあれだけ真由と話していたのに、あっさり光孝に股を開いた真由が不可解でならなかったのだ。 「チクんないでよね」 「だったら、話は終わりだよね。アンタには関係ないんだし」  話を切り上げてさっさと帰ろうとする真由を、理沙は強い力で引きとめた。 「終わりじゃないよ!アンタ、本気なの?」 「終わりじゃないよ!アンタ、本気なの?」 「お互い遊びに決まってんでしょ!」 「遊びって・・・余計最悪じゃん!」 「うるさいなぁ。私がどうしようと私の勝手でしょ。なんでアンタなんかに説教されないといけないの?」 「心配してるんでしょ!友達だから!」
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