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理沙の言葉に真由がカッとなって力いっぱい理沙を突き飛ばした。
ガタンと音を立て、机で強かに背中を打つ。手を伸ばしかけて、真由は慌てて引っ込めた。
床に座り込み、理沙は悔しそうに真由を見上げる。真由も何処か苦しそうな顔をして、理沙を見下ろした。
「理沙・・・・私はアンタの事・・・友達だと思った事なんてない」
「真由・・・・・・・」
胸をえぐられた気分だ。理沙は酷いショックを受ける。
「アンタはいいわよ。美人のお姉ちゃんが居て、外国暮らしのパパとママがいて、勉強しなくったって成績はそこそこ、ろくにクラブにも入んなくても平気の顔しちゃってさ・・・・自由でいいよ」
はたから見れば、真由の方が学業においてもクラブ活動でも優秀で、人から頼られる存在だ。理沙はほとんど落ちこぼれに近い。
だから真由が理沙に妬みを抱くとは、理解出来なかった。
「アンタなんか何にもないのに、丘本くんみたいな彼氏作っちゃって・・・・ずるいのよ」
「あれは・・・」
卓哉が好きなのは自分ではなく、美沙だ。それを真由にはまだ言えてなかった。
この場で言っても、おそらく真由は信用しない。真由は続けた。
「たかがキス一つでキャーキャー言って、馬鹿みたい。言っとくけどね、丘本くんの童貞奪ったの、私だから」
「・・・え・・・・・?」
突然の告白に理沙はもはやついていけない。
真由はけらけら笑いながら喋る。
「丘本くんってば、誘ったらあっさり乗ってきて、ホント、チョロかったよ。そこまでアンタの事、好きだったわけじゃないって事よ。アンタはなんにも知らないんだもん、本当にバカ」
さすがにそこまで言われると、理沙も怒りが湧いてくる。理沙は獣になる前までは、確かに適当な生き方をしてたとは思う。すぐに真由や美沙に甘えて、自分では何もしなかった。でも、それで誰かを傷つけたりした覚えはなかった。
「そんなに私が嫌いなら、なんで一緒にいたの?」
「嫌いなんて言ってないでしょ!」
真由は声を上げた。
ますますわけが分からなくて、理沙は顔を顰める。真由はギラギラした瞳で理沙を見つめていた。
野性の本能が疼く。少しでも目を逸らしたら、仕留められそうだった。
「・・・ムカつく。アンタにはいっつも、私の気持ちなんて伝わらない」
「ハッキリ言ってよ!意味わかんない!」
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