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はくたくさまは前髪を掻き上げ、額を露わにした。
「あ・・・」
「まずここに一つ・・・ね」
額の中心には紅い紋章のようなものが刻まれていた。
わたしは思わず椅子の上に立って、身を乗り出した。
よく見ると、確かに目のように見える。
「これ・・・見えているのですか?」
「ううん。実際、映像として見るのに使っているのはこの二つの目だけだよ。」
「ではこの目は何に使うのですか?」
「色々な世界をこの目で見ることができるんだよ。僕は森羅万象を視る神獣だからね。禁忌だけど、相手の心を見透かすこともできるよ・・・
っと、丁にはまだ難しい話だったね。ごめんね」
「・・・」
「他にも体に残りの六つの目が額と同じようにあるんだ。今は人の姿だから模様みたいになってるけど、本来の姿に戻れば、
本物の目に変わるんだ」
「・・・・・・」
やはりこの方は神様なのだと改めて思った。
人の心にも入り込めるなんて、ほんの少しだが、恐ろしさを感じる。
「丁?」
わたしは、はくたくさまの額に手を伸ばし、その紅い模様を指でそっとなぞった。
「ちょ・・・丁・・・!あははは、くすぐったいよ~」
はくたくさまは声を上げて笑った。
「あ、ごめんなさい・・・!」
わたしはすぐに手を引っ込めた。
「いや、いいよ。模様と言えど、ちゃんと神経が通っているから触られるとこそばゆいんだ。」
「不思議です…、教えてくださってありがとうございました。」
わたしはぺこりと頭を下げた。
「まさか、僕のことを聞かれるとは思わなかったな。嬉しいよ。こちらこそありがとうね。」
「そんな・・・」
わたしは何だか恥ずかしくなり、おはじきを意味もなくいじった。
「ふふふっ」
はくたくさまがまた小さく笑った。
わたしも釣られて頬を綻ばせて笑った。
なんて穏やかな時間なのだろうか・・・
こんな時間がずっと続いてほしい・・・
終
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