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砂浜には海の家が立ち並び、色とりどりの水着を身につけた多くの海水浴客で溢れかえっていた。
遠くの海に目をやると、反射した太陽の光が水面(みなも)に無数の輝く星を造り出し、まるで女神の衣が海に漂っているような、そんな神々しさすら感じる。
海岸通りの渋滞した道を、少しスピードを落として車をすり抜けながら慎重に進んで行った。
カナは後ろのシートで、ひとり興奮して暴れまくっている。
「海だあ!!」
そりゃ、見ればわかるって。
「泳ぎたいなら、ここで降ろしてやるぞ」
降りるという返事を期待して聞いたのだが。
「いや、私カナヅチだし!」
そうですか。
稲村ケ崎を越えた先で、それは唐突に姿を現した。
陸続きの小さな島、江ノ島。
「ひゃっほう! 江ノ島来るの初めて!」
まあ、夏休みだというのに、学校の補修サボってアイス食ってるような地味な日々を送る女子高生にとって、これは非現実な光景なんだろうな。
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