プロローグ 避難

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 そのサイレンは突如僕の頭に響いた。僕はその音のするほうへ顔を向け、窓から外を見ると立ち止まって僕のように空を見ている人たちがいた。  そのあとスピーカーから聴き取りにくい声がした。 『避難警報です。避難警報です。付近の方は至急避難して下さい。避難警報です。ーー』  突如避難しろと言われても何をすればいいのか分からなかった。  僕がテレビをつけるとテレビに映るアナウンサーがしきりに避難して下さいと言っていた。僕はこの緊急事態に危機感がしめせず、もう一度窓の外を見た。  そこには僕と同じように惚けている人や電話している人ばかりで危機感などまったくなかった。  その時遠くのビルから煙が立ち上り、少し遅れて爆発音が街に鳴り響いた。  それに続くようにいくつもの煙が見え出した。  人々の反応は速かった。車は急発進し、タクシーには人が群がった。車を持たない人は駆け出した。僕は財布と携帯を掴み取ると、玄関の扉の横にある棚からリュックを取り出し外に出た。  マンションを飛び出すと目の前を軍の車が横切った。なにが起きているのは分からない。テロリストかもしれないし毒ガスかもしれない。すると今度は空を武装したヘリが飛んでいった、煙は近くまできていた。ヘリは煙の近くにつくとガトリング砲の音がしだした。小さく戦車の姿も見える。  戦争だ。そう思った僕は煙から遠ざかるようにして駆け出した。戦争を経験したことはない。銃なんて触ったこともない。だけど聞こえた銃声と煙からは死を感じた。  どのくらい走ったのかは分からない。ただ気づいたときにはあの嫌な音はなくなっていた。僕は走るのをやめ、ゆっくり歩いた。あの煙が追ってくるようすはない。  数分歩くと僕のように歩いている家族を見つけた。なにも持たず歩いている姿はきっと僕のように忙しいで家から飛びたしたのだろう。話しかけると疲れきった顔の父親が言った。 「君はサンフランシスコから来たのかい?」 「ええ。そちらもですか?」 「そうさ。アナウンスが聞こえたと思ったらいきなり爆発音が遠くでしてね。今日が休日でよかったよ」 そう言って彼は息子を見た。 「これからどこへ向かうんです?」 僕はたまらず聞いた。もしなにか知っていることがあれば教えてほしい。
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