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大通りを、今度は重い音を立ててトラックが横切った。トラック〝のようなもの〟ではなく、正真正銘元の時代で見覚えのあるトラックである。どうやら時代が流れても、そのまま使われているものもあるらしい。
当たり前と言えば当たり前の話でもあるのだが、操縦席に、やはりというべきか人間の姿は見当たらない。
そもそも、ここまで説明を受け歩いてきたその間、私は人間の姿を一切見かけていない。『Mit-2013』のような人型ロボットすらも、だ。
この東京の街にあるべきであろう存在の一切が欠落しているようだ。
知りたかった。
いや、知らねばならない。私はこれから、どのような時代に身を置いて生きていくのか理解するために。
「『Mit-2013』。この時代の人間は、一体どんな生活を一般としているんだ。見てみたい」
「かしこまりました、ドクター・ウラシマ。ちょうどそこの建物群には人間の居住区があります。拝見させていただきましょう」
細い人形の腕が、指が、近くにあった大きなビルを指した。
やはり一切声色の変化しない『Mit-2013』であったが、どうも少しずつ重みが増しているような、どこかそのような気がした。
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