Wake up

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だが私には不可解だった。 『Mit-2013』といえば確か、冷凍睡眠に入る前に私が手掛けていたロボットの型番号(ロット)だ。しかしそれは台車に移動用のタイヤと作業用アームを取り付けただけの簡素な業務用ロボットであり、とても目の前にいる女性と同一のものだとは思えない。 そもそも、彼女は人間でなくロボットなのか。 「私はドクター・ウラシマ直接の指令を受けた個体として、ドクターの冷凍睡眠を維持・管理する任を受け持っています。そして新たに、貴方の身辺のお世話も担当することになりました。この姿は、新たな任に対し『Wonder-x00《エクスゼロ・ワンダ》』から与えられたものです」 そういえば『Mit-2013《マイト》』には、作業効率を上げるため学習機能を搭載しており、それ故にかつての言葉をプログラムに遺したのだ。私の言葉を実行できる日まで、幾多の試行錯誤を繰り返し結論へと近づかせるためである。 〝直接の指令〟とはつまり、私がプログラミングしたということなのだろう。それを事実として受け止めれば、確かに彼女はあの作業用ロボットが必要に応じて改造を施したものだと結論付けられなくもなかった。 だが、彼女の説明だとその結論には繋がらない。 学習機能を施した〝マイト〟自身が改造したならともかく、この姿は与えられたものである、と彼女は言った。『Wonder-x00《エクスゼロ・ワンダ》』とは一体何なのだ。私の発明品にそのような型番号(ロット)のものはない。
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