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もっとも私が目覚めた以上、ここは技術が進歩した未来の世界ということであろう。それこそ、永遠の生命すらものにすることが出来るほどの、だ。
ならば、後に私の知らないものが生まれていても不思議なことはない。
「……『Mit-2013《マイト》』。聞かせてくれ、ここは未来の世界なのか?」
「それが『ドクターが眠りに就いた頃から見て』という意味であれば、その通りです」
「だとすれば、私の願いは……叶ったのか?」
「『永遠の時を発明のために』ですね。その願いは実現可能であると考えられます」
なるほど、やはり世界は相当に進歩しているようだ。
ならば、まずは学ばねばならない。いかに私といえど、旧い知識や技術では今の科学に到底及びもしないだろう。
「わかった。それで、お前は私の世話も担当だと言ったな。ならば、まずは外界を見てみたい。ただ歩くだけでも知らないものは多いだろう。質問攻めにするだろうから、覚悟しておくように」
「承知しました。何なりと」
冗談半分、本気半分であったのだが、『Mit-2013』はあくまで無機質な声色のまま事務的に返答する。特段何かを期待していたわけでもなかったが、物寂しさを感じなくはない。
人型であるが、人間らしさが発達していないように見えるのは時代の問題なのか、それとも私の開発したロボットの進化系である事の問題なのか。
しかし、そんな事は瑣末な感情に過ぎなかった。ようやく望んだ世界が私を迎え入れようとしているのだ。眠りに就く前まで含め、長く忘れていた胸の高鳴りを隠せない。
未来都市とやらを拝んでやるとするか。高揚のまま、私は『Mit-2013』の導きに従って研究所を後にした。
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