Futuer World

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その後も暫く、街中を歩きながら『Mit-2013』の説明は続いた。 現在、政治は人間に代わって『Wonder-x00』が行っているらしい。 正確な判断と常に中立である視点、また全ての国民状況を把握しているという点からも、これは不正確な存在である人間が行うよりも適任であるように感じられた。 また、仕事においても各分野にロボットが配備されており、特に医療や農業、生産業などはほぼ全てロボットが担っているという。人間が行う仕事は、音楽や小説などの創作活動や工芸品など芸術性の高い生産活動が主であるという。 独創性の高いものは機械で生み出すことが難しいためであるらしいが、近年は人間の思考についての解析が非常に進歩したため、これらの業界も徐々にロボットの進出が進んでいるのが現実であるという。 職を失ってもそれを認識した『Wonder-x00』による指令で潤沢な給付金が与えられるため、生活に困ることはまずない。そもそも機械が担うサービスの全ては無料であり、金銭を持つ必要性すら殆どないのである。そのため、生涯職を持たない人も珍しくないという。 「一切仕事のない生活、か。それはそれで、楽しいのかね……」 至れり尽くせりも、ここまで過ぎるとかえって不気味だった。 確かに元の時代ではブラック企業だの過労死だのニートだの、勤労に対する問題は少なくなかった。 だが、少なからず仕事を生きがいとする人間もいたはずなのである。 限りある人生を超えて発明に打ち込みたかった、私のように。
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