墜燕-壱

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四時四十三分。 人の気配も車のライトも見えない。少女は数時間も光を放ち続け、電池残量が限界近くなったスマートフォンをコートのポケットにしまうと、大きく深呼吸をした。 いよいよだ……! 次第に高ぶる気持ちを落ち着かせると、交差点の中央へと歩みを進める。決められた時間にはまだ一分あるが、噂では時間ちょうどに交差点の中に居さえすればいい事になっている……らしい。あまり早すぎても車が来たとき危ないが、一分を切ったとなればもう問題もないだろう。 目的地で歩みを止め、もう一度大きく息を吸う。 冷え切った空気が肺を満たす、内側から凍っていくような感覚。既に外側から凍えているというのに、それはとても気持ちが良かった。 頭の中では、時刻が四十三分になった時点から秒読みを続けている。もう間もなく六十秒経つ。   三、二、一―――― 待ち続けた時が訪れる。少女は再び高まる気持ちのままに、最後の数秒を小さく声にして読み上げていた。
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