記憶のかけら

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「斉藤さ~ん、点滴の時間ですよ~」 新人看護士が笑いかけてくれる。 初々しい献身的な女の子だ。 愛嬌があって男人気は悪くないと思う。 でも僕は反応もせず、ただベッドに横たわっていた。 僕が、この部屋で過ごすようになって、もうすぐ二週間くらいになる。 「今日も青空ですよ~。気持ちいいですね~」 「わたし、さっき怒られちゃって~、言われた事したのに、わたしの独断だって報告されたんですよ……先輩酷いですよね~」 「あっ、でもでも! 片山先生が慰めてくれて~自分用に買ってきたケーキくれたんです~」 僕は何も反応しないのに、彼女はいつも、他愛もない話をしてくる。 主には病院内での出来事だった。 愚痴が六割、惚気が二割、残りの二割は世間話や彼女のプライベートな内容だったり。 そして、話すことが無くなると、部屋を出ていくときに決まって言う台詞があった。 「じゃぁ、明日も来ますからね~」 彼女は、言葉のとうりに必ず僕の部屋にきた。
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