記憶のかけら

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その日の深夜。 寝ていた僕は、人の気配を感じて目が覚めた。 「……ごめんなさい。……ひっく……うぅ……」 看護士の彼女が、傍らで泣いていた。 「……ごめんなさい……ごめんなさい」 彼女は何度も謝罪の言葉を続けていた。 そして、聞いてしまった。 「……わたしが止めてれば、あなたは事故に遭わなかったし記憶を失うこともなかった……」 そう言った彼女は、声を殺しながら、しばらく泣いていた。 『……あれ? これってまさか……』 そして僕は、寝たふりをしながら仮説をたてていた。 ─── 「斉藤さ~ん、点滴で~す」 泣いた翌日、彼女はいつも通りだった。 「今日は昨日の風が嘘みたいに静かですね~」 「……あの、質問していいですか?」 僕は、いつも通りに話し始めた彼女に声をかけた。 立てた仮説を確かめたい。その一心で。 「…………あ、え? なんですか?」 目を見開いた彼女は、数拍おいていつも通りの笑顔を浮かべる。 僕が彼女と話すのは初めてだ。 驚かれても仕方ない。 でも、聞かずには居られない。 僕の横で泣いていた彼女との関係を。 「……僕と……付き合っていたんですか?」 「えっ?!」
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