卒業という名の始まり

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「美月」 誰もいない教室。 その黒板の前で立っていたあたしを呼んだのは幼なじみの陽介だった。 「遅いよ、陽介。誰もいなくなるまで待ってろって何?あたし、友達との約束断っちゃったんだからね?」 「ゴメンな。でも、二人で話したいことあったからさ。許してよ?」 「…話って?」 「うん。…あのさ」 「…うん」 「なんか、あっという間だったよな。卒業って」 「言うと思った」 「なんだよ。みんなそう言うもんだろ?」 「だね」 「美月」 「んー?」 「ずっと好きだったって言ったらどうする?」 「……」 「なぁー?」 「なにそれ。泣いちゃうじゃん。ばかなの?」 強がって笑ったけど、本当に泣きそうになって、声が掠れた。 「好きだよ。美月」 「あたしだって好きだよ。ばーか」 陽介が今までで多分一番優しくあたしに笑いかけてあたしを抱きしめた。 その腕の中で涙が止まらなかった。 18年間の幼なじみという関係はここで終わりを告げるけど、それは新たな関係の始まりでもある。 あたし達が恋人になった日に卒業という名の始まりの花束を添えよう。
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