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わたしは近所のスーパーへ牛乳を買いに出かけた。
空は、いまにも雨が降りだしそうな、くすんだ色をしていた。
夏は太陽が沈むのが遅く、街一面をおおう雨雲は、陽の光を通して黄みをおびた灰色をしている。
大気は水分を含み、汗と一緒になって、わたしの体にまとわりつく。
多くの人達は、この感触を好まないだろう。けれどわたしは、こんなじとじとした空気が好きだ。湿り気のある空気が肌に密着し、自分もその空間と、大地や空と一体になれる気がする。
スーパーへ入ると、冷房の風が湿った肌を冷やす。
ここにいれば、冷え性になる。速やかに牛乳だけを購入し店を出た。
外へ出ると、雨が激しく降っていた。スーパーのビニール屋根に雨滴が響いて、あたりは水煙が立つ。
顔に雨のしぶきがかかり、ジーンズの裾も濡れてしまった。
「困ったなあ」
わたしは牛乳が入ったレジ袋を胸に抱えた。
「すぐ、やむでしょう」
隣にいたスーツ姿の若い男のひとが言った。スーツは、急に降りだした雨のせいでずぶぬれだった。
「かわいそお」
わたしは、思わず声に出してしまった。
「ハハッ、こんなのいつもですよ」
男のひとは、照れるように笑って、濡れた鞄をくしゃくしゃのハンカチで拭いていた。でも濡れすぎていて、水滴を引き伸ばしている感じだった。
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