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恋人になったけど、前とほとんど変わっていない。
敬語も抜けないし、態度も急には変えられない。
恋人らしいこともあまり出来ていない。
でも、少しずつでも近づいていけたらいいなって思う。
尚の時みたいに言いたいことを我慢するんじゃなく、思ったことはちゃんと伝えていきたいって思ってる。
暖さんからも「涼はビシッと言わないと気づかないから」って言うアドバイスをもらっているしね。
涼さんが軽トラのエンジンをかけた。
「史華ちゃん、置いてくよ」
「待って下さい」
私は急いで乗り込んで、シートベルトをつけた。
「どこに行きたい?」
時間を見ると11時。
「じゃあ、初めて会ったカフェに行きたいです」
「あー、あそこか。了解」
軽トラがガタガタと揺れるのを二人で笑う。
まるで、私たちみたいだね。
決してスマートには行かないけど、こうやって笑いながら隣にいられればいいな。
涼さん、カフェに着いたら私からもう一度交際を申し込ませてね。
1年前と同じように、これからも、何度でも涼さんが困っていたら助けてあげるね。
だから、涼さんも叩かれそうになった私を助けてくれたみたいにかっこよく私を助けてね。
暖かい日差しが差し込む車内で、信号待ちの間そっと涼さんの左手を握った。
《完》
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