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「しかし水晶はその形を崩すことはない。深海ザメやダイオウイカに頼んで、壊してみようと試したこともあったよ。君が窒息してしまうのはわかっていながら」 「こわそうとしたの……?」  怯えた目で長老様を見上げた。クラゲにはきっと、視覚なんて無いのに。 「どの道、魔法が解けたからには君は長く生きられない。水晶の中の酸素は限られている」 「あ。そっか……」 「たとえ君が窒息死しても、その空間の中に閉じ込められたままだ。永遠に、その姿で」  どうしてか、クラゲの方が悲しそうである。 「長い間その中で時を止めていた所為で、君の肉体に本来宿っていたはずの微生物は残らず消滅してしまった」 「水晶の中は無菌状態ってこと……!?」  少女にはその発言を理解するだけの知識があった。何故なのか、以前はどういう身分だったのかは、今は考えても仕方がなかった。 「そうだ。菌の協力なくして生きるのは、とても難しい。君はじきに窒息する。そして臓器が残らず機能停止した後も、腐ることができない」 「そんな――……」 「君を守りたいという何者かの願いが災いして、君は海に……自然の流れに還ることもできない」  水晶を取り囲む小さな魚たちは、蛍光に彩られた頭をしゅんと垂れた。長老様の言葉を重く受け止めているのだろう。  唐突に少女の胸の内に実感が沸いた。
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