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 ――わたし、死ぬんだ……。自分が何者なのかも、何の為に、何の使命を背負って生かされたのかもわからないまま。  少女は遠い遠い海面を求めて目を凝らした。  切望はあっても、懐古の念は、そこにはなかった。想像するだけだ。自分が切り離された世界が、どんな場所であったのかを。  あまりもの深度だからか日光の気配は感じられない。  水圧も水晶によって遮断されている。  ――これじゃあ生きる喜びも思い出せないまま、終わってしまう。  むき出しの我が身を抱きしめて少女は震えた。  魔法が解けた反動なのかは不明だが、水晶の中の温度が徐々に下がっている。おそらく外界の深海と同じ温度になれば、自分は酸素があろうとなかろうと活動できなくなる。  守ってくれた誰かの強い想いは愛だったのだろうか、或いはもっと残酷な何かだったのだろうか。  強い愛が、残酷な結果を生んだだけ。そう信じたかった。  ――わからない。これが悲しい、って気持ちかな……。  泣きたいのに、涙が出ない。出し方を忘れたのかもしれない。自分の中の余計な水分が、涸れてしまってるのかもしれない。 「お嬢さん、君さえ良ければ、その水晶を立ててあげたいのだけど」  長老のクラゲがふと言った。 「立てる? どうして」 「見せたい物があるんだ」 「……じゃあ、好きにしていいよ」  何もかもどうでもいい、そんな投げやりな気持ちになっていた。
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