428人が本棚に入れています
本棚に追加
(あのリムジン、もしかして……)
リムジンのドアが開き、運転手が降りてくる。
運転手が恭しく後部座席のドアを開けると、伊織がよく知っている人物が姿を現した。
『竜也!』
ベランダから身を乗り出して叫んだ。
その声に気づいた竜也が顔を上げ、手を振ってくれる。
その間に、雨はポツリポツリと言っていられないくらいに、激しい勢いで降りだした。
駆け足で竜也がマンション内に入るのを確認すると、伊織は部屋に戻り両手一杯の衣服をソファにドサッと置く。
ふぅと息を吐き出したところで、インターフォンの音が鳴った。
竜也が来たみたいだ。
一応、インターフォンのモニターで確認してみる。
やはり、竜也だ。
内鍵を二ヶ所開錠すると扉を開け、竜也を出迎えた。
『いらっしゃい』
「突然、押しかけて悪いな」
『さぁ、上がって』
「お邪魔します」
成瀬竜也は、高校からの親友だ。
高校を卒業し大学に進み、父親の会社の後を継いで今や、IT企業の若き社長だ。
だが、まだ正式に後を継いだ訳ではなく、本人曰く副社長らしい。
最初のコメントを投稿しよう!